
先日、ある会社の経営者(男性)からこんな相談をいただきました。
「会社の部下(女性)がHSP気質と思われるのだけど、どう対応すればいいか分からなくて・・・」
「決してパワハラ的な対応はしていないが、いつもどこに地雷があるか分からない感じで、接し方が分からず、チームとして仕事が成り立たなくて・・・」
という事でした。
そこで今日は、HSPの部下や後輩をもつ経営者・先輩へ、絶対にしてほしくない事やしてほしくない言い回しなどをお話しします。
もくじ「HSPの部下への対応で絶対にやってほしくない5つの事」
1,高圧的な態度や怒鳴る様な言い回し 2,仕事を次々に頼む 3,他人と比べて否定する 4,文句や人の悪口を言う 5,人事異動は慎重に
1,高圧的な態度や怒鳴る様な言い回し
HSPさんは人よりも感受性が豊かな面があるために、高圧的な態度や怒鳴るような言い回しをする方がとても苦手です。
例えそれが自分に言われていなくても、そうした扱いをされた人の気持ちに共感、同調し自分自身が辛くなってしまったり悲しい気持ちになってしまうことがあります。
生まれつき脳内のミラーニューロンの働きが活発で共感力が高く感情に影響されやすい特性があります。
「ミラーニューロン」とは視覚などで得た情報から相手の感情を鏡のように自分の感情に反映させる反応のことです。
「Aさんに何か注意した記憶はないのに・・・」と落ち込んでいるAさんを不思議に感じることもあるかもしれません。でもそれは共感力や同調力の高さゆえに起こる共感疲労でもあります。
「他人の事まで考えなくても良いのでは?」と思う方もいらっしゃるかと思います。でもそれがHSPの特性であり生きづらさの原因でもあるのです。
「気にしない」ができないのです。もちろんそれは特性であり、思考の癖でもあるのですが、ご自身がHSPであることに気づいてない方がとても多いために本人もどうしたら良いのか・・その対処方法がわからないのです。
ではどうしたら良いのか??
それは『感情的にならず、平和的に会話をしてほしい』のです。
相手の想いに気づく能力に長けているHSPさんなのでどうしてそれが必要なのか、どうしてほしいのか?しっかりと気持ちを伝えてくれたら必ずそこに応えてくれることと思います。
あなたは普段どんな言葉で相手に話していますか?
それがなぜ必要なのか、その想いや理由をしっかり伝えていますか?
相手の気持ちや想いに耳を傾けていますか?
基本的に真面目で丁寧に仕事に取り組む気質のHSPさんは、その想いに共感できれば必ず期待以上の結果を出してくれることと想います。
HSPという気質をお互いが理解していくことでHSPの探究心の強さ、責任感の強さ、発想の豊かさ、人と人とをつなげる調整力などその多彩な能力を発揮してくれることと思います!

2,仕事を次々に頼む
お仕事を頼むときにもHSPの特性を知っていただけると良いポイントをお伝えしておきます。
HSPの特性として『頼まれごとを断れない』という特徴があります。
自分がたくさんの仕事を抱えていたとしても、相手の困っている気持ちを察する能力も長けているので、誰かが困っていると手伝ってあげたいと思って人の仕事まで引き受けてしまう。
ついつい自分の仕事よりも相手の困りごとを解決しようと必死になってしまう・・。
そして気づくと自分の仕事は一つも終わっていないのに、人の仕事を引き受けてしまって自分の仕事に手が回らない・・なんていうことは大いにあります。
相手の役に立つことが好きだったり頼まれごとを断ったら相手をガッカリさせてしまうのではないか?
そんな気持ちも起こってしまうのでなおさら断れないのです。
そして仕事に対しては一つ一つ丁寧に仕上げたいと思うために、手を抜いたり要領よくこなすことは得意ではありません。
また、周りの人に頼む事も得意ではなく、 「〇〇さんも忙しいのに頼んだら申し訳ない」 「私が頑張れば良い事だし・・」 と周りに頼る事も苦手なので一人で抱え込みがちになってしまいます。
さらにそこに慣れない作業だとそれをスムーズにこなすために時間がかかってしまうことも多いのです。
そうして時間ばかりかかって、やることに追われてしまいやってもやっても終わらない・・・
気づかないうちに沢山抱えた仕事に追われどんどんと疲弊してしまい、普段ミスをしない様なこともミスをしてしまうという事も起こり得ます。
こうなってしまうと正に負の連鎖です。
周りから見たら些細なミスであっても「私のせいかも」「私がもっとこうすればよかったのかも・・」と些細なミスを拡大解釈をしてしまう思考ぐせがあるので、自分をひどく責めたり、「やっぱり私はだめだ・・・」と自分の存在すら否定して落ち込んでしまいます。
またその感情をずっと長い時間抱え込んでしまい自信を失ないがちなのもまたHSPの特性です。
こうして色々な事がまるでからまった糸のように負の連鎖を起こしてしまうのです。
ではこのような負の連鎖を起こさないためにどうすれば良いのか??
それは仕事を頼むときに『一人で抱え込みすぎていないか?』をまずは気にかけてあげること。
今仕事をどれくらいの量を抱えているのか?
本当は聞きたいのに聞けずに困っていることはないか?
それを少し気にして声をかけてあげることで「いや・・実は・・」と本音を言ってくれる事も増えます。
何か普段しないようなミスをしたとき、疲弊した姿が見えたとき、人よりも残業をしているとき
そんな時は「何か抱え込んでいるお仕事はない?」「何か困っていることはない?」
そんな風にちょっとした一言をかけてあげると、なかなか人に頼れない頑張りすぎのHSPさんもぽろっと本音を言ってくれるかもしれません。
そんなちょっとした配慮ができるとHSPさんの心もふっと軽くなるかもしれません。
優しく手を差し伸べてくれる上司がいたら疲弊してお仕事を辞めてしまうHSPさんも減っていくと想います。
そんな優しい働く場所が増えてくれることを願っています。

3,他人と比べて否定する
HSPの特性として人と比べてネガティブになってしまう思考ぐせがあります。
周りの刺激を敏感にキャッチしやすいHSPさんは普段から人と自分を比べてネガティブ思考になりがちです。
「〇〇さんはできるのになんで出来ないの?」などとできることが当たりだと思われている環境はとても辛く感じてしまいます。
また人に注目されると緊張して本来の力を発揮できなくなってしまう事もHSPの特徴の一つなので
そのような緊張した環境はとても辛く感じてしまいます。
またノルマなどのある仕事に関しても、それをクリアしていく作業はとても精神的ストレスを感じやすい傾向にあります。
元々自己肯定感の低いHSPさんは、否定すると更にやる気を失ってしまいます。
そこでオススメなのは『褒めて伸ばす』『スモールステップ』です。
「褒めて伸ばすなんて・・」面倒臭いし何を褒めて良いのか分からない・・・そう思われる方もいらっしゃるかと思います。でもそんなに難しいことではないので大丈夫です。
ポイントは『実際にやっていることをそのまま伝える』ということ。
「今日も元気だね!」「今日も頑張っているね!」「いつもとっても助かっているよ!」「〇〇してくれるととっても仕事がやりやすいよ!」などと普段当たり前にやっていることを伝えてあげれば良いのです。
「こんなことで喜んでもらえた」「認めてもらえた」「役に立つことができたんだ!」そう思えることで元々人の役に立つことが大好きなHSPさんはより一層自分の能力を発揮しようとモチベーションを保ってお仕事をすることが出来るようになると思います。

4,文句や人の悪口を言う
これは私自身もとっても辛かった経験の一つです。
ついつい仕事をしていると、誰かの文句を言ってしまったり、悪口をいってしまう・・・
そんな言葉が職場内で聞かれることは無いですか??
HSPさんは共感力や同調力が高いために、悪口を言っているマイナスの感情をキャッチしやすく、その様な言葉を聞くと自分自身も影響を受けてしまい、気分が落ち込んだりイライラしてしまうことがあります。
また、相手の気持ちもまるで自分の事の様に感じてしまうために、「悪口を言われている人が聞いたらどんな気持ちになるだろう・・・・」「きっと悲しく感じるだろうな・・・」
そんな風に自分自身もつらい気持ちを体感として感じてしまいます。
その様な環境に長く居ることはHSPさんにとってとても苦しく、その場に居ることすら辛くなってしまいます。
そして結果体調を壊したり、精神的に病んでしまったり、お仕事を休みがちになる、急に気分が落ち込んでしまう・・・などの身体症状に出てしまうことも多いです。
文句や悪口は自分自身の信頼関係にも関係します。ですので、その様な話は話しても良い場所をわきまえて話すようにしましょう!
部下は上司の言動や行動をとっても良く見ています。ましてHSPさんに関しては言葉の奥の上司の本音にも気づいてしまう能力があります。
もし部下の仕事が長く続かない、お仕事を辞めてしまう方が多い・・・など部下の指導にお悩みがあるようなら、今一度仕事に対する志も自分自身で確認して行く事も大切なことかもしれません。

5,人事異動は慎重に
仕事をする上で人事異動は多くの会社で行っているものかと思います。
人材の成長を促すためにも、会社全体のバランスを取るためにも人事異動は必要なものであると感じます。
ただHSPの気質や特性から考えると、人事異動は慎重に行っていただきたいと思います。
それは何故か???
HSPさんにとって『環境の変化というのは大きなストレスを感じやすいから』なんです。
人事異動はHSPの特性が無くてもストレスを感じやすい方は多く居ると思います。
今まで慣れた場所ややっと築いた人間関係をまたリセットする・・・・
それは大きなエネルギーが必要になります。
社会人なんだから当たり前
会社の決まりだから当たり前
異動出来ることはありがたいこと
そういう気持ちで部下に接してしまうこともあるかと思います。
でもそれだけではHSPの部下は気持ちよく人事異動を受け入れられないのです。
それはワガママでもなく頑固なわけでもなく
HSPという気質が関係しているんです。
HSPさんは『危険察知能力』に長けているという才能があります。
これは今いる場所を『安全』と認識して、今の安全な状態から変わる事を『危険』と感じ、自分の身を守ろうとする能力です。
慎重派という言葉でも表現されたりすますが、『変わることを極度に嫌う』という特性があります。
それは人間の歴史の中でも生命を存続させるために与えられたHSPの才能でもありますが、この『危険察知能力』の変化を嫌う特性をよく理解しておかないと、人事異動を伝えたときに大きな不安をいだいてしまったり、極端に嫌がられてしまう・・・などの反応が見られる時もあるかと思います。
ではどうしたら良いのか??
それはHSPの部下が感じている不安を丁寧に聞いてあげることです。
HSPはありとあらゆる状況を想像して、「こうなったらどうしよう・・・」と見えない未来に大きな不安を抱えることがあります。
ですので何に不安を感じているのか?を聴いてみたら、「勤務地まで行けるか不安」「電車の時間が長いのが不安」「異動先の人に受け入れてもらえるか不安」などなど意外と些細な事に不安を感じている事が多いと思います。
些細な悩みでもHSPにとっては大きな悩みに感じてしまうので、「こんな風にとらえたらどう?」「こんな方法もあるよ!」など部下が悩みに対してどうしたらその不安を軽減できるのか?を一緒に考えてあげる時間を多めに持ってあげることで、徐々に前向きに考えられるようになるかと思います。
そしてもう一つ大切なことは『なぜあなたが異動する必要があるのか?』をしっかり伝えてあげることです。
HSPさんは責任感も強く真面目な方が多いと思います。
異動はHSPさんにとって、自分が会社の為にどの様に役に立てているのか?を改めて考えたりその意味付けを自分の中で行うことでその先のモチベーションに大きな影響を与えます。
異動によって良い効果が出ること
異動によってさらなる成長の経験を増やせること
異動によって才能を活かすことが出来る
などぜひ前向きに異動を捉えられるような意味付けを伝えられる様に事前に考えておいていただくことをオススメします!

最後に・・・(HSPの部下をもつ上司、企業ご担当者様へ)
この記事を最後まで読んでくださったということは、HSPの方が周りにいる、もしくはご自身がHSPの方もいらっしゃるかと想います。
もしこの記事を読んで周りの方にHSPかも・・と思い当たる方がいたらぜひHSPの特性を知って頂きHSPさんと一緒にその才能を活かせる環境を作ってあげてほしいと願っています。
そしてご自身も同じような気質があると感じるのであれば、ご自身が特性に気づいてもっと楽に楽しく生きる力をつけていけるお手伝いができたら嬉しく感じます。
本宮千歳が講師として伺います!
5人に1人と言われるHSPさん。
あなたの周りでも気付かれていないだけで苦しい思いをしているHSPさんがいると思っていただいて間違いないと思います。
会社の生産性を上げるために大切な事として「人間関係を良くすること」があります。
悩んでいる時にHSPさんご自身がしっかりと声を上げられること。
それを受け取ってくれる仲間がいること。
私が講師としてお伝えし、その後皆様で実際にセッションという形で実際の職場の事を考えていただく。
その機会を設けるだけでも、静かに苦しむHSPさんにとっては嬉しい事です。
まだまだHSP専門の講師は少ない気がしますが、少しずつでも多くの企業にHSPさんの存在を認識していただき、全ての方にとって働きやすい環境を整えていただく社会になることを祈っております。
最後までお読み頂きありがとうございました!
HSPさんの特性を知って頂き、ともに素晴らしい才能を会社でも活かせることを願っています!